吉例顔見世大歌舞伎:マハーバーラタ戦記をみた

お久しぶりです。久々に歌舞伎を観に行ったらあまりにも楽しくて最高だったので記憶が新鮮なうちに感想(というか記録?)を書きます。本当にみんなにも観てほしい。ネタバレしますが。

10:50 東銀座駅到着

11時からの公演のチケットを引き取っていなかったので結構焦りましたが、駅直結みたいなもので、思っていたより時間に余裕はありました。慌てていて飲み物を持ってくるのを忘れたので買いたかったのですが、とりあえず席に荷物を置こうと思い(今考えるとイミフ)、自分の席に向かったら列の真ん中で、他人の膝に当たりまくりながら一度座ったらもう飲み物を買いに行くのは無理な時間と申し訳無さになっていました。最初の幕間まで喉カラカラで耐えました。

チケット

3階A席で6000円でした。本当はA席とあまり眺めが変わらない4000円の3階B席が良かったのですが、チケット購入時点で売り切れていました。A席すら売り切れそうだった。2階席になると12000円でチケット代がいきなり倍になる割に1階は17000円とかだった気がするので2階で観る意味はそんなにない気がします。

3階席の眺めとしては5列目で花道が半分くらい見切れる以外は良好です。花道の後ろの方で立ち回りがあるとちょいしんどいです。舞台上は全体像が見やすく、8倍の双眼鏡で視界に人一人がちょうど収まるくらいです。東京宝塚劇場でいうとA席くらいだと思います。

一幕

演目は、マハーバーラタ戦記です。事前知識なし、イヤホンガイドもなしだったので話が理解できるかどうか不安だったのですが、始まった瞬間からめちゃくちゃ現代語で安心しました。でも舞台が古代インドだからそれはそう。当然初演かと思っていたのですが調べたら数年前にも歌舞伎座でやっていた。

まず、幕が空いた瞬間ギンギラギンの仏像のコスプレした人が10人くらいひな壇の上に並んでいてスゲ〜〜〜(爆笑)でした。衣装めっちゃ作り込まれててすごい。千手観音みたいなやつとかすごい眺めちゃいました。

それから、ギンギラギンの神々が「人間って争ってて愚かだからどうにかしたいね〜」って言ってたら太陽神が出てきて、「人間にも生かしておく価値がある清らかで徳の高いやつがいるぜ!たとえば、汲手(くんてぃ)姫とか。」で、なんか姫と俺の子を成せばそいつが人間界を平和にしてくれるとか言いだして、なんそれウケる〜と思ってたら他の客もウケてたしひな壇の上の神もウケていた。

帝釈天も出てきて、「俺が汲手姫との子を作ったらその子は武力で人間界をいい感じにしてくれるけどな〜」と言うので、じゃあ二人(二柱?)ともその女との子を作って、どっちが人間界をいい感じにできるか見てみようじゃん(笑)という話。対称実験ですね。

その後は汲手姫の処女懐胎シーン。汲手姫がガンジス川で祈りを捧げていたところ(歌舞伎のセットなのでとてもガンジスとは思えない)太陽神が出てきて「俺と一緒にマントラを唱えよう」と言ってくるので、当然唱えるんですが、そしたら子が爆誕します。汲手姫は、まだ恋も知らない我が身なのに、子を授かるなんて......と思い悩み、この子が本当に神の子ならきっと生き延びるだろうと言って子をガンジスに捨てます。マジ最低でちょっと胸糞でした。

このシーンの汲手姫の悩み方が結構印象に残っています。まず、処女懐胎した人間はリアルワールドに存在しないのにこういう悩み方をするだろうな〜って考えた人はどうやって想像したのか不思議だし、恋愛→妊娠というのは当時のインドでもそうだったのか?というところに疑問を感じました。古い社会ってどこでもお見合い結婚的なのが主流だと思ってたんですけどインドってそうじゃないの?

子は戦士の家の夫婦に無事拾われ、迦楼奈(かるな)と名付けられます。生まれたときからついていたクソデカ耳飾りをずっとつけたまま成長したらしい。赤ん坊がそんなのつけてたらすぐ耳千切れそうで気になる。なんか奇跡をいっぱい起こしたりしながら青年になった迦楼奈は弓に夢中になり、太陽神からの助言ももらって(インドなのに)家業を継がずに弓とかマントラとかの修行に出て、隠していた家柄を理由に破門されます。(マントラってマジで何?)あとインドでは牛は神聖なので、間違えて牛を射ってしまい呪われます。

この破門シーンも面白くて、瞑想中にでっっっっかい蜘蛛(本当にでかかった)に噛まれても我慢していたら、師匠に「戦士だから痛みを我慢できるんだ!ワシの教えを争いに使おうとするなんてけしからん!」と言われてブチ切れられるんですけど、マジでそんなことなくない?私別に戦士の家系じゃないのに痛みに強いですけど?今両足に直径2.5cmくらいの靴擦れあるけど靴擦れの原因になった靴普通に履いてますけど?と思ってしまいました。

あと迦楼奈やってる人、声がめっちゃいいです。中村菊之助さんというらしい。今回中村の人が多かった気がするんですけど歌舞伎ってそういうシステムになっている?特定の家門によって構成される公演があったりとか。役名表のところにも名字は書いていないので本当にそういうシステムかもしれない。違う名字で同じ名前の役者めっちゃいそうだけど衝突しないんですかって前も思ったし。役者さんも文化も全然知らない。もっと知りたい。

破門になってどうしよ〜^^;の迦楼奈の前にまた太陽神が現れて、ゾウの国の王位をかけた武道大会に出るといいよと教えてくれます。なぜならそこの第3王子が帝釈天の子だから。この時点ではまだ教えてもらっていなかったですが。まあつまりゾウの国の王妃って迦楼奈の生みの母親です。

ゾウの国の五人の王子はキャラが濃くて、第1王子は賢くて強くて優秀な百合守良(ゆりしゅら)、第2王子が力だけ強い(しかも顔が赤い)野蛮な風韋摩(びーま)、第3王子が帝釈天の息子の阿龍樹雷(あるじゅら)、第4,5王子が双子の、名前わかりません。弓で的を射るバトルをしたら二人共外さないから終わらなくて〜みたいな下りとかいろいろあって、なんやかんやで迦楼奈は現王の兄の娘で五王子に敵対する鶴妖朶(づるようだ)の側に付きます。この鶴妖朶をやっていた女形の人がもう女性にしか見えなくてすごかった。声とかも完全にそのへんのおばさんにいる感じです。阿龍樹雷は白塗りしててもわかる露骨なイケメンだったので誰だろうと思って調べたら中村隼人でした。

鶴妖朶っていうおばさんは悪くて、相手の五王子を蝋でできた建物に閉じ込めて火を放って知らん顔をしますが、彼女と親友の誓いを交わしてしまった迦楼奈がこいつもしかして……と悩み苦しむところで1幕終了です。この時点でライバルの阿龍樹雷のほうが正義の味方っぽいのでそんな悪いおばさんとは早めに手を切りなさいよという気持ちになりました。

幕間1

30分くらい休憩があるのでなんか買って食べたりTwitterをしたりします。歌舞伎座は自分の席で飲食をしていいのですが、電波は通らないようになっているので、鯛焼きと飲み物を買って席以外のところで食べながらTwitterしてました。1幕が最高すぎたのでこれあと2時間あるとか嬉しすぎるな〜と思っていました。

二幕

五王子はうまく逃げられたみたいで実は生きているのですが、焼死したことを伝え聞いた阿龍樹雷の婚約者の家では、新しい婚約者を決めるためになぜか覆面ダンスバトルが開催されます。そこには阿龍樹雷が参加していて、本当にどういうわけか迦楼奈も参加している。この場面は話の流れに一切関係がなくて、ナートゥをやらせたかっただけっぽい。ダンスバトルに負けた人たちはなんか倒れててウケました。

私は歌舞伎の音楽(囃子っていうんでしょうか)が結構好きなのですが、今回全体的に木琴?をたくさん使った軽快な印象のものが多くてインド意識してるなと思いました。あと木をめっちゃ打ち合わせるやつ、それ何?って前回も思ったけど今回も思った。歌舞伎ってカン、カンカンカン...っていう音がしながら幕が開くイメージがあると思うのですが、それのことです。木を打ち合わせるだけであんな音量出るのすごい。あの木のやつを専門にやってる人がいる?

なんやかんやがあって(もう記憶が薄れてきていてやばい......)五王子と迦楼奈・鶴妖朶がサイコロバトルをすることになります。鶴妖朶は相手を賭け事に夢中にさせるマントラが使えて、家来(名前忘れた)はサイコロで狙った目を出すマントラが使えるので、これによって相手の戦力や財産を奪い取ろうという魂胆です。マントラってマジ何?

マントラのおかげで相手の土地や王子まで根こそぎ奪い取った迦楼奈・鶴妖朶ですが、流石にかわいそうだという現王の助言で、五王子は12年間誰にも見つからずに森の中で暮らし、その後1年かの間も誰かに見つかれば殺されるという条件で合意します。かわいそう。きついよ普通に。

そのあと、森の中で羅刹(人間を食らう化け物)の女性が出てきて、さすらっていた第2王子の風韋摩に恋をしたと言います。一族のしきたりがどうこうみたいなので羅刹のボスと風韋摩が戦うことになって一立ち回りあり、無事勝ちます。立ち回りのときボスの見た目が歌舞伎すぎてマジで面白かった。赤くて長い髪の毛みたいなモップみたいなふさふさをめっちゃ振り回すスタイルなんですが歌舞伎では普通?なにもわからない。風韋摩はお色気シーンあるようなキャラじゃないのに勝利のデュエットダンスあったのも面白かった。子が成されていました。その後理由は忘れたけど一緒に暮らせないみたいになってお別れしてた。昔の話ってラブシーン(を意識したもの)のあと全部妊娠につながりがち。

幕間2

さっきの幕間で鯛焼き食べちゃったからすることがなくて、とりあえずトイレに並んでみた。やることないときはトイレに並ぶと時間が潰せるのでおすすめです。

3幕

12年間たった後、めっちゃ王子たちを探す鶴妖朶。執念がすごい。そんなに王位ほしいか?と思ったけど、虐げられてた......周りには人がたくさんいたけど孤独だった......迦楼奈は太陽......彼のようにまっすぐ生きてみたかったとか言い出してクソデカ感情じゃ〜んとなりました。動機はやっぱりよくわからないけど。それでなんかよくわからないけど戦争することになって、阿龍樹雷は親族同士で戦いたくないけど、でも天命だからおれはおれの役を全うする!になっててかっこよかった。

書いていて思ったけどよくわかっていない部分多いかもしれない。いや話自体はわかるんですが、多分細かい所の心情描写とかを見落としている。

3幕はほとんど戦いとお気持ちを申し上げている場面だったのであんまり言うことないんですが、2幕でこさえた風韋摩と羅刹の子供が出てきたのが印象的だった。子役の子がやってたんだけど台詞回しとかめっちゃしっかりしてて、というか私まだわからないんでしっかりしてそうで、ですが。その子を無敵状態になった迦楼奈が殺してて残酷でした。無敵状態というのは帝釈天が旅の修行者に化けて出てきたときに、大事な耳飾りを授けてあげたらオメー大した奴だぜ!と認められて人生でたった一度だけ無敵状態になれるスキルをプレゼントされていたのです。2幕で。書き忘れてた。

そのあと迦楼奈と阿龍樹雷のタイマンなんですが、二人共馬に乗っていたので馬役の人がシンプルに人間を乗せてめっちゃダッシュしてて大変そうだった。1幕でも馬がヒヒーンって前足をめっちゃ上げてて中ですごいアクロバットなことしてない!?ってなった。前足と後ろ足を人間一人ずつでやってるので。

戦いの結果は書きません。ここまで全部書いたらもう結果も書きなさいよという感じではある。最後はまた金ピカの神々が出てきて人間も頑張ってんね〜ってなって、民がいっぱいでてきてみんなで踊って終わりでした。最後ちょっと感動した。全然伝わらない文章になってるけど。

まとめ

普段宝塚ばっか見てるので、スター(スターではない)が銀橋(銀橋ではない)に出てきたとき拍手しなくていいんだ〜と思ったり、声がかかったとき掛け声なのかシンプルに迷惑客なのかわかんなかったりしました。まだマスク推奨してたけど掛け声はもうOKになっているのか知らない。あと隣に座ってたおじさんが公演中に普通に紙パックのmiroをヂューって飲んでてびっくりした。

宝塚と歌舞伎、どちらも舞台上に単一の性別の人間しか上がらないというところが共通しているけど楽しさは結構違うと思っていて、宝塚はスターの輝きを観るのがメインでお芝居のストーリーとかは結構ガバガバなことが結構な頻度であるのですが、歌舞伎はショーがない分ストーリー全フリでシンプルに話が面白く、舞台の演出も囃子も金がかかってそうで楽しいという感じです。でも女形はやっぱ宝塚の男役ほど美しくない。どちらもどちらのいいところがあります。

歌舞伎面白いからみんなもみてほしい。私も超絶初心者なのでもっとみたいです。